箱の家 エコハウスをめざして /難波和彦+界工作舎 

難波和彦+界工作舎 「箱の家 エコハウスをめざして」読了

箱の家 エコハウスを目指して

箱の家 エコハウスを目指して

戦前、日本の住宅は茶の間を中心にほとんどの生活が行われていて、食事も団らんも就寝も1室でまかない、家族のプライバシーもなにも無かった。
戦後、職住分離、寝食分離が声高らかに叫ばれ、公団住宅からnLDKという日本独自の概念が生まれた・・・。
と、この辺りは建築に携わる人間なら、学校の近代建築史の授業で教わったハズ。

ともかく、戦後60年経ち21世紀になってもいまだnLDKの呪縛から逃れられず、大量生産の貧困な住空間が体勢を占める昨今。
そんな殻を破ろうと、頑張る建築家で最も勢いのある、難波和彦氏の出した答えが「一室空間住居」と「住宅の工業製品化」の箱の家シリーズ。

本書はその箱の家シリーズのコンテクストから、技術的な背景も含めた解説書。

「住宅の工業製品化」が大きな柱の一つであるからには、技術的な記載を削ぐわけにはいかないが、この部分には、僕らにも適用できるアイデアや技術がつまっていて、興味深い。

もうひとつの柱、「一室空間住居」。家族個人を尊重するあまり、「子供が部屋にこもって出てきやしねー」なんてことがニュースにもなる時代。もう一度、家族単位の再構成を目指そうということかな。ただ、戦前のプライバシーもへったくれもない時代に戻ろう!などという乱暴な原理主義とは一線を隔し、家族の気配を感じられ、かといって丸見えでもない、ちょうど良い「塩梅」を実現していると思う。

「箱の家」はいわゆる、実験住宅ではなく、実際に100棟以上建築され、人が生活している建築です。現実に則した「落としどころ」は僕らが住宅を設計するときなどにも、十分応用可能ではないでしょうか。

そういった意味でも、非常におもしろく読み進めることが出来ました。