マイ・アーキテクト

hideyasu2g2006-07-17

以前ブログにも書いた映画「マイ・アーキテクト」を見てきました。
20世紀の四大巨匠の内の一人、ルイス・カーン。その息子、ナサニエル・カーン氏が父の建築をめぐりながら、カーンを知る人々との出会い
を重ね、その軌跡をたどるというドキュメンタリー映画です。


字幕の監修やパンフレットは香山壽夫氏が行っているので、建築の解説部分も安心して見られます。


そういえば、学生時代に香山壽夫氏の「建築意匠講義」を読んで随分感銘を受けたのを覚えています。
その中に、カーンの解説もあって、映画の中でも少しだけ触れられた「beginings」や「The Room」についてもわかり易く書いてあります。
カーンの建築を理解するに当たってこの「beginings=初源」は非常に重要ですから、気になる方は読んでみると良いかもしれません。
というか、建築関係者には必読書だと思っています。ちょっと高いけどね。


ソーク研究所やキンベル美術館、フィリップ・エクセター・アカデミー・図書館、フィッシャー邸etcカーンの建築でも重要なものがいくつも出てきます。
息子であり監督のナサニエル氏はひとつひとつ、建築を巡り父がかかわった人々に出会い、インタビューを重ねていきます。


元所員、クライアント、カーンを乗せたタクシー運転手、遺体の発見者、カーンと交流のあった建築家達、そして、自分の母でもあるカーンの愛人。
そこには僕達が知っている、建築家ルイス・カーンではなく、人間として未完成なカーンの姿が見え隠れしています。
I.Mペイやフィリップ・ジョンソン、フランク・O・ゲーリーもインタビューに応じています。


「水に浮かぶ交響楽団」の指揮者であり、船長との出会い。(カーンが船も設計していたなんて知りませんでした!)映画全編を通して、最も感動的なシーン。


本妻と愛人2人の3つの家族を持ったカーン。25年を経てフィッシャー邸で再開する異母兄弟達。それぞれ複雑な思いを吐き出すシーン。


そして最後は、バングラデシュ国会議事堂。当時独立を果たしたばかりのバングラデシュで、国会議事堂という形で民主主義を体現したカーンとそれを誇りに思う現地の人々。
カーン最大で最後の建築で、息子ナサニエルはようやく父の姿を見つけます。


カーンの建築を理解するには116分は尺不足ですがそれは致し方の無いこと。
建築好きにはたまらないですし、カーンをあまり知らない人にも主要な作品は紹介されるのでさわりには良いかも。

ドキュメンタリーとしてもすごく良く出来てますので、少しでも気になった方はぜひ見てみてください。

名古屋は7月21日まで、名古屋シネマテークさんで上映しています。

つーか、DVDでねーかな。