手仕事の跡

某現場では内壁と天井の仕上げに左官仕上げを選んだ。
もちろん、もっと安くて汚れの心配のない仕上げだっていっぱいある。
でも、今の建築には、便利な仕上げ材があふれてすぎていてたくさんのカタログから「選ぶ」作業が主になっていないだろうか?
そんな疑問を以前からいだいていた時、知り合ったのが太田左官さんだった。
太田氏にはずいぶん無理を言って、たくさんサンプルを作ってもらいこの場所に一番ふさわしいと信じる物を作りだしてもらった。
この現場のためだけのオリジナル配合。

石灰クリームに骨材を配合してもらい、コテでしごく。
手際の良い職人さんのコテがひと撫ですると、しみこむように壁に仕上がっていく。見ているだけでも心地良い。
職人の手仕事の跡がわずかに見える左官壁。
窓から入る光でかすかな陰影を生み出す美しい壁に仕上がったと思う。